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(物語) ママへ

佐世保の少女が起こした事件には震撼させられた。そんなことをして天国のママが悲しまないとでも思うのだろうか。

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台湾のある家族の物語である。その家族にはお父さんとお母さんと10歳に満たない5人の子供がいた。お父さんは定職に就くことができず、アルバイトで生計を立てていた。家族の暮らしは厳しかったという。さらにお母さんの体の具合が悪くなり、病院に入院することになった。ますます家計は苦しくなり、5人の子供たちは3度の食事も満足にできなくなった。

ある日、お母さんのお見舞いに病院に来ていた子供たち。お腹を空かしているのを見かねた看護婦さんが、子供たちを外の定食屋さんに連れて行った。驚いた子供たちに看護婦さんは「何でも好きなものを注文して」と言った。子供たちが選んだのは「陽春麺」という日本でいうかけそば。一番値段の安いメニューだった。注文したそばが運ばれてくると子供たちは美味しそうに食べ始めた。しかし9歳になる一番の年上のお姉ちゃんが突然食べるのを止めて箸を置き、看護婦さんに向かってこう言った。

「この美味しいおそば、お母さんにも食べさせたいの。包んで持って帰ることはできますか?」

2人の妹たちも続けて食べるのを止めた。看護婦さんは「もう一杯頼むから安心して食べて」と子供たちに優しく言った。追加で注文した陽春麺は、看護婦さんと子供たちがお母さんの元へと大切に運んだ。

子供たちの行動に感動した看護婦さんは、何とか力になってあげたいと考えた。病院のスタッフに相談し、台湾を代表する新聞社、中央通信社にコンタクトすることができた。お腹を空かしながらも病気のお母さんを気遣う優しい子供たちがいる、何とか支援して欲しいと訴えた。すると、この話は台湾中に大きく広がり、支援の輪が広がっていく。約500万円ほどのお金が集まったという。お父さんは記者会見を開き、頂いたお金は地方自治体の教育機関に預けて子供たちのために大切に使います、そしてこれからは家族みんなで力をあわせて頑張るので、これ以上の支援は遠慮します、と話した。

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運命は時として残酷なものだ。お母さんの病気は末期の子宮頸がんで、既にガンは全身に転移していた。病状はますます悪くなっていく。ある日、お母さんは主治医の先生にもう一度だけ家へ帰ることを願い出る。主治医はその願いを許可した。

住み慣れた家で、家族は大事な時間を一緒に過ごした。その時、お父さんは「楽な生活をさせてあげられなくてごめん」と何度も謝ったという。お母さんは「本当に色々ありがとう」と繰り返し感謝の言葉を述べたという。子供たちもお母さんにありがとうと何度も言ったという。

家族が一緒に過ごす大事な場所。色々な思い出が詰まった家。その家を出る時、お母さんは家族のみんなとある一つの約束をした。

「また貧しい生活をしても構わない。生まれ変わった時も、またこの家族で、もう一度一緒に暮らしましょうね」

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2006年4月、お母さんは天国へと旅立っていった。その葬儀は質素なものだった。子供たちとお父さんは、今までのお母さんとの思い出と感謝の気持ちを込めた手紙をいっぱい書いて、お母さんの棺の中に入れた。お母さんが天国へ一人で行っても寂しくないように、と。

テーマ : ちょっといい話 - ジャンル : ブログ

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