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(物語) もうひとつのシンデレラエクスプレス~寝台急行「銀河」恋物語~

22時55分、東京駅東海道線ホーム。新幹線の最終新大阪行きがとうに出てしまったこの時刻、かつて深夜ラジオ番組のリクエストコーナーで聞いた話を思い出す。

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私と彼が出会ったのは、大学1年の時でした。私は入学式の時に勧誘された愛好会に入りました。愛好会のみんなと飲んだりカラオケに行ったり、いろんな所へ行きました。彼はその愛好会のメンバーで、その年のクリスマス前に付き合い始めました。彼は大阪の出身。東京で育った私はそれまで関西の人と話をしたことはあまりありませんでしたが、穏やかで優しい人でした。

彼の家は経済的にあまり余裕はなく、それでも彼は東京で一人暮らしをしていたので、帰省する時はいつも東京駅から夜行の普通列車に乗っていました。その電車に乗ると名古屋の先まで行くらしく、その後は電車を乗り継いで大阪まで行くのだそうです。よく東京駅へ彼を見送りに行っていました。

転機が訪れたのは大学4年の時。彼は地元大阪で働きたいと言いました。私は迷いました。ずっと関東で育った私にとって、大阪で働くことはとても不安でした。また私達の大学のレベルでは就職先を見つけるのも大変でした。時はちょうどバブル経済が崩壊した頃。資料請求は100社を越え、書類選考で落とされるのが普通でした。運良く面接まで進んでも不採用の連続。やっと決まった会社は、上野にある小さな会社でした。そして彼は大阪の会社に内定しました。

卒業式が終わり、彼は東京を離れることになりました。私はいつもと同じく東京駅に見送りに行きました。階段を上がっていくと、そこにはいつもと違う列車が止まっていました。青いブルーの車両。彼は私をその列車の一番後ろへ連れて行きました。そこには「銀河」という文字に幾つもの星が描かれた絵が書いてありました。それを見ながら彼は「毎年一回ではなく毎月一回、彦星は織姫に会いにくる。大阪へはこの「銀河」に乗って帰るよ」と言いました。彼の乗る夜行列車を見送った後のホームはただ寂しいだけでした。一人家へ帰る電車の中で、私はずっと泣いていました。

それから3年間、彼は本当に毎月一回、大阪から会いに来てくれました。帰りは決まって急行「銀河」。どうして新幹線で帰らないのか聞いたことがありました。すると彼はこう言ってくれました。「最終の新幹線は午後9時18分、「銀河」は11時。少しだけ長くいれるから」 

そして私達は結婚しました。大阪の高槻という所に今も住んでいます。今思えば、毎月一回、午後11時に東京駅のホームに鳴り響く「銀河」の発車ベルが、一時間早く魔法が解ける合図だったと思います。新幹線で帰ってもたった1時間40分しか変わらなかったのだけれど、その時間はとても大切な時間でした。

ユーミンの「シンデレラエクスプレス」を聞くと、みなさんは新幹線の最終列車を思い浮かべるのだと思います。でも、私にとってのシンデレラエクスプレスは急行「銀河」でした。この歌を聞くと、あの頃を思い出します。

ユーミンの「シンデレラエクスプレス」をリクエストします

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戦後、東海道の夜を駆け抜けてきた寝台急行「銀河」。その役割を、今年の3月14日に終えました。


松任谷由美「シンデレラエクスプレス」(歌詞)
http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=37345

テーマ : 遠距離恋愛 - ジャンル : 恋愛

コメント

No title

俺の中の全米が泣いた!

汽車は闇を抜けて

いい話ですね。やはり銀河にはこういう話がよく似合う。
それにしても、JRはもう少しブルトレの処遇を考えて欲しいものです。

Re: 汽車は闇を抜けて

> いい話ですね。やはり銀河にはこういう話がよく似合う。
> それにしても、JRはもう少しブルトレの処遇を考えて欲しいものです。

まったくおっしゃる通りですね。来年のダイヤ改正で、ついに「はやぶさ」と「富士」も廃止されてしまうとの噂が飛んでいますね。「ムーンライトながら」も季節列車になってしまうとか。旅情がなくなってしまいますね。
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