(旅日記) 上野駅13番線ホーム

「ふるさとの 訛懐かし停車場の 人ごみの中に そを聴きに行く」

明治の歌人、石川啄木は現在の盛岡県の渋民村の出身で、故郷が恋しくなるとよく上野駅へ足を運んだらしい。

人間の記憶というものは、3歳くらいまで遡れるらしい。私は3歳の1年間を山形県鶴岡市で過ごした。最も古い記憶は真夏の海岸の風景、そして夜行列車のベットから見たおばあちゃんとの別れの情景である。毎年夏になると、必ず上野駅から夜行列車に乗って田舎へ遊びに行っていた。私の海好きと旅好きの原点がここにある。

上野駅はとても不思議な駅である。東京なのにどこか東北の匂いを感じさせてくれる。かつての上野駅は「北の玄関口」と呼ばれ、その匂いがもっと強かった。東北方面へのほとんど全ての列車が上野駅で発着していた。だが、上野駅にも大きな時代の波が押し寄せる。東北・上越新幹線の開業と東京駅への延伸、航空運賃の低廉化、高速バス網の発達、そしてマイカーの普及により、上野発着の特急、急行、夜行列車は次々に廃止されていった。そして「東北縦貫線」構想により、高崎・宇都宮・常磐線の通勤電車までもが東京駅まで直通運転され、この駅を素通りしようとしている。
http://www.jreast.co.jp/construction/proj02_main.html#08

上野駅の雰囲気も変わった。ステーションルネッサンスと名づけられたプロジェクトによって駅のリニューアルが図られ、若い女性をターゲットにしたお店が続々と開店し、「駅ナカ」の原点になった。上野には若いおしゃれな女性が多い。丸井をはじめ多くのショップが上野の街にはあるのだ。

上野駅は変わった構造をしていて、新幹線と地下鉄を除くと2階建てになっている。山手線や京浜東北線が発着するのが「高架ホーム」と呼ばれる2階、そして1階にあるのが線路が行き止まりになっている「地平ホーム」である。この構造は、オランダのアムステルダム中央駅を模していると言われている。数少なくなった「ブルートレイン」と呼ばれる夜行列車が発着するのが地平ホームの13番線ホームである。

地平ホームの一番左に位置する13番線ホームの雰囲気は、今も昔も変わらない。私はこのホームの持つ雰囲気が好きだ。特に夜行列車独特の真っ青な空色の車両が、赤いテールランプを灯しながら、北へ向かって静かに走り去っていくのを眺めているの瞬間が好きだ。この雰囲気はバスや飛行機にはない。

明日、この13番線ホームから最後の旅立ちを迎える夜行列車がある。上野と金沢を結ぶ寝台特急「北陸」。また一つ、旅情が消えていく。

テーマ : 鉄道旅行 - ジャンル : 旅行

コメント

北陸新幹線が計画されてると聞きますし、
素晴らしい進化だと前向きにとらえましょう
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